避妊のメカニズム
IUSは子宮内膜(赤ちゃんのベットになるところ)に作用して内膜が薄くなり、受精卵の着床(妊娠の成立)を妨げたり、子宮の入口の粘液を変化させて精子が腟の中から子宮内へ進入するのを妨げたりすることで避妊効果を発揮します。
IUDとIUS
IUD(子宮内避妊用具)はIntrauterine deviceの略で避妊の目的で子宮内に装着する小さな器具です。IUDにはいくつかの種類がありますが、薬剤(黄体ホルモン)が付加されているのがIUSです。
IUDとIUSの違い
IUD
IUDは、子宮の中の環境を変えることによって受精卵が子宮内膜(赤ちゃんのベットになるところ)に着床(妊娠の成立)するのを妨げ、妊娠を防ぎます。さらに銅付加IUDは、精子の運動性を抑える、また、精子と卵子の受精を妨げる働きもあり、高い避妊効果を発揮します。IUD装着後は生理の量が増えることがあります。
子宮内膜の変化
IUS
IUSが子宮内に装着されると、付加された薬剤(黄体ホルモン)が子宮の中で少しずつ放出されます。この黄体ホルモンは子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜はうすい状態になります。そのため、IUDとは異なり、生理の量が少なくなります。
子宮内膜の変化
IUSの挿入は婦人科へGO
IUSは、婦人科で医師に装着してもらいます。挿入する前には、子宮の位置やサイズ、骨盤内諸臓器、乳房の検査、腟内容物の検査などを行います。その他、妊娠していないこと、性感染症にかかっていないことを確認します。
挿入方法
子宮の入り口を消毒し、IUSが入った細くて柔らかいプラスティックのチューブを使って子宮内に挿入します。挿入時は痛みを感じることがありますが、装着後はそのまま帰宅できます。
いつどのように挿入するの?
IUSは月経開始後7日以内に挿入します。
妊娠初期の流産または妊娠初期の人工妊娠中絶の場合
その直後に挿入することができます。
出産後の場合
子宮の回復(6週間以上)を待ってから挿入します。
装着後の注意点
IUSの使用を開始してから数か月間は、多くの女性に生理とは異なる出血が見られることがあり、その出血パターンには個人差がみられます。
しかし、多くの場合は時間の経過とともにこのような出血は減少します。
また、黄体ホルモンの作用により子宮内膜がうすくなるため、生理の回数が減り、約20%の人では生理がおこらなくなります。IUS装着中に生理がおこらなくなることは、必ずしも妊娠または閉経を示すものではありません。ただし、前回の生理から6週間以内に生理がおこらない場合や、吐き気、嘔吐、食欲不振などのつわりのような妊娠を疑う兆候があらわれた場合は、直ちに受診してください。
装着後の定期健診について
IUSを適切に使用するために、IUSの位置や出血の状況などを確認する定期健診はとても重要です。IUS使用開始後3ヵ月以内(医師の指示があれば1ヵ月後も)、1年後(または必要に応じてそれ以前)に必ず検診を受けてください。
IUSの効果を維持するためには、IUSが正しい位置にあることが大切です。まれに、IUSが気付かないうちに脱出(体の外に出てしまう)してしまったり、穿孔(子宮壁に入り込んでしまう)してしまったりすることもありますので、出血や疼痛など位置のずれや脱出・穿孔を疑う症状がみられた場合は、速やかに受診してください。
また、このほかにもからだの変化に気づいた場合や、妊娠を疑う兆候がみられた場合は、速やかに受診してください。
IUSの「良き」も「悪しき」も理解する
IUSは一度装着すれば、最長5年間にわたり避妊が可能です。メリットやデメリットなどを含めた特徴をよく理解したうえで、あなたにあった避妊法を選びましょう。
IUSのメリット
- 女性主体で避妊ができる
- 一度の装着で、長期の避妊が可能
- 毎日、避妊のことを考える必要がない
- 生理の量が減り、生理痛を緩和する
- 全身へのホルモン作用が少ない
IUSのデメリット
- 医師による装着、除去が必要である
- 装着後初期に生理時期以外の出血が 続くことがある
IUSの副作用について
IUSを装着すると、下記のような副作用が起こることがあります。症状がひどい場合や長く続くときは医師に相談してください。
- 月経出血日数の延長
- 月経周期の変化
- 卵巣のう胞(通常はホルモン変化に伴う一時的なもの)
- IUS除去後の出血
- 月経時期以外の出血
- 腹痛 など
その他、骨盤内炎症性疾患、子宮外妊娠、IUSの脱出・穿孔※にも注意する必要があります。発熱、下腹部痛、おりものの異常、急な出血、疼痛、性交痛、急な腹部膨満感、下腹部痛(圧痛)などの症状があった場合は、直ちに受診してください。また、下腹部痛を伴う生理の遅れがあった場合、無月経の人で出血が始まった場合は、頻度は低いものの異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性もあり、早期の処置が必要となりますので、直ちに受診してください。
※IUSの穿孔(せんこう):まれにIUSが子宮壁に入ってしまうことがあります。
IUSが適している女性・適さない女性
・注意が必要な女性
IUSが適している女性
- これ以上妊娠を希望しない女性
- 次の出産まで期間をあけたい女性
- 長期にわたり避妊を望む女性
- お薬の飲み忘れが心配な女性
IUSが適さない女性
- IUSの成分に対して過敏症がある
- 性器癌、黄体ホルモン依存性腫瘍にかかっている、またはその疑いがあるといわれたことがある
- 生理以外の異常な性器出血がある
- 医師に子宮の形や位置に異常があるといわれたことがある(子宮腔の変形があるような子宮筋腫を含む)
- 性器感染症(子宮内膜炎、卵管炎など)がある
- 過去3ヶ月以内に性感染症にかかったことがある
- 子宮頸管炎または腟炎にかかっている
- 現在、骨盤内炎症疾患(PID)にかかっている、または何回もPIDを繰り返している
- 過去3ヵ月に分娩後子宮内膜炎または感染性流産を経験したことがある
- 異所性妊娠(子宮外妊娠)を経験したことがある
- IUS、IUD(子宮内避妊用具)挿入時や子宮の出口(頸管)を拡張する時に強い痛みがあったり、脈 が遅くなったことがある
- 重い肝障害または肝腫瘍がある
- 現在妊娠している、または妊娠している可能性 がある
上記のような症状や状態の人はIUSが使用できない場合があります。詳しくは医師に相談してください。
IUSの使用に際して注意が必要な女性
以下の項目に1つでもあてはまる場合は、IUSを挿入する前に必ず医師に報告してください。
- 先天性の心疾患または心臓弁膜症がある
- 糖尿病である
- 肝障害がある
- 出産経験がない
- てんかんがある
- 副腎皮膚ホルモンの長期投与療法を受けている
- 授乳中である
妊娠したくなったら?
医師によってIUSを取り出すことにより、挿入前の状態に戻るので、妊娠は可能になります。
IUSでの避妊を考えている、 みなさんの質問にお答えします。
Q1
IUSで必ず避妊ができるの?また、
いつから避妊効果があるの?
A1
IUSは高い避妊効果があります。報告によって異なりますが、正しく使用した場合の1年間に妊娠する確率は、0.2%です。なお、避妊効果は装着後すぐに得られます。
出典:Contraceptive Technology,20 ed., Ardent Media,2011 Table3-2 改変 http://www.contraceptivetechnology.org
/CTFailureTable.pdf
Q2
IUSにはどんな作用があるの?
A2
IUSは子宮内膜に作用して内膜(赤ちゃんのベッドになるところ)をうすくして着床(妊娠の成立)を妨げたり、子宮の入口の粘液を変化させて精子が腟の中から子宮内へ進入するのを妨げたりすることで避妊効果を発揮します。
Q3
どのくらいの期間、避妊できるの?
A3
IUSが正しく装着されていれば長期間避妊効果は持続しますが、装着後5年間を越えないうちに交換してください。また、取り出すのと同時に新しいIUSを挿入することができます。
Q5
IUSを装着していても授乳できるの?
A5
授乳は可能です。しかし、IUSの成分が微量ながら母乳中へ移行することが報告されています。また、授乳中の方では穿孔のリスクが高くなるとの報告もあります。このため、授乳中の人には一番に薦める避妊法ではありません。必ず医師に相談してください。
Q6
IUSは性交に影響するの?
A6
IUSが性交に影響することはほとんどありません。もし、性交時に違和感がある場合はIUSが正しい位置に装着されていない可能性がありますので、性交を避け医師に相談してください。